ダイアロスの歴史を知る会 非公式記録
毎週定例会を開催しています。
日時:火曜日・土曜日 23:00~24:00
場所:レクスール・ヒルズ城門南の小部屋(Master of Epic Pearlサーバー )
※興味のある方は募集CH「エルアン文明研究会」まで

図書室で調べもの

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

ラスレオ大聖堂は、ビスク中央広場から長い橋を渡った先にある石造りの立派な建物だ。
高くそびえる尖塔がいくつか並び、その上にある鐘が正午になると荘厳な音で時を知らせている。

聖堂の中には礼拝室があるのだけど、礼拝に訪れる人はあまり居ないようだ。
幅の広い階段を登って二階に上がると、その部屋はある。
広い部屋には長椅子が並び、正面には高くなった壇。かなりの人数が入れそうな立派な礼拝室だけど、今はガードと神官以外に人影はない。

この大聖堂は、アルケィナの本拠地だ。ギルド員なら度々訪れる場所なのだろうけど、アルケィナとは縁が無いので、私はほとんどここに来たことがない。
どこのギルドにも所属したことがないので、アルケィナとは無縁というよりギルドというものと無縁なのだけど、暗闇から魔物を呼び出して戦う私は、どちらかというとアルケィナよりも暗使に近い。そういう意味でもアルケィナとは縁遠いのだ。

アルケィナと縁のない私が、なぜ今日ここに来ているのかというと、賢者さんに聞いたエルアン人のことについて書かれた古文書を自分で読んでみようと思ったからだ。

それにしても、ここは、いつもこんなに人が少ないのかな。もしかしたら、今日はたまたま誰も居ないだけなのかもしれない。そう思いながら、礼拝室をあとにして図書室を探す。
それは、すぐに見つかった。礼拝室の真下が図書室になっていた。

二階に比べればこじんまりした空間に、本がずらりと並べられている。
図書室にも、人は少ない。アルターがある中央広場はいつも大勢の人で賑わっているけど、橋を渡ったこちら側はとても静かだ。
アルケィナの研究員らしいディディエルという人に訊くと、目的の古文書のことを教えてくれた。誰でも閲覧して良いということなので、借りて読んでみることにする。

 

この古文書は、ビスクがエルガディンとの12日間戦争で手に入れた物らしい。
古代モラ語やサスール語で書かれているということなので、元はエルガディンがサスールとの戦争で手に入れた物だろう。ノア・ストーンを奪ったときに、この古文書も手に入れた。それを今度はビスクがエルガディンから奪ったということ。
ノア・ストーンと一緒に、その制御方法を探る手掛かりになりそうな古文書も略奪者の手から手へ移り渡っているのだろう。

私にも読める言語に解読されたものを、いくつか読んでみた。
それによると、エルアン人を作ったのは古代モラ族のようだ。
エルアン人は、優れた魔力と知性を持っていて、中でも特に秀でている者は古代モラ族と共に世界を創造したと書いてある。

これは、すごいことだ。エルアン人というのは、私が思っていたよりすごい人たちだった。ネオク山でクノッペンさんから聞いた、“古代モラ族はホムンクルス技術を使って労働力を得ていた”という話から想像していたのとは少し違う。
単なる労働力だと思っていたけど、共に世界を創るためのパートナーという役割を持った人たちだったみたいだ。

古代モラ族が箱舟でダイアロスにやってきた。これが全ての始まり。
そして、モラは世界を創る前に(あるいは世界を創りながら?)エルアン人を作る。
エルアン人の中から秀でた能力を持っている者を選び出し、彼らと一緒に世界を創造する。

世界創造の前から居て、世界の創造にたずさわったエルアン人。
私は今まで、古代モラ族が世界を創り、その世界で様々な生産活動をさせるためにホムンクルスを作り、そのホムンクルスたちが後にエルアン人と呼ばれる人たちになった。と思っていた。
だけど、どうもそうじゃなかったようだ。エルアン人は世界ができる前から居て、モラと一緒に世界を創った人たちだった。

エルアン人とは現種族の起源、始まりと伝わる古代の民を表す
古文書には、そう書いてある。
全ての人は、エルアン人を起源に持つ。つまり、私もエルアン人の末裔の一人ということになる。
現種族の起源とはそういう意味だ。

ただし私が読んでいるのは、古代モラ語やサスールの言語で書かれた古文書。
ということは、サスールの人々にとっての“現種族”ということになる。
キ・カ大陸から渡ってきた人々まで含まれているのかどうかはわからない。

誰も居ない図書室で、私は古文書をテーブルの上に開いたまま大きく息をついた。
テーブルの上では、燭台に灯る炎が三つ、ゆらゆらと揺れていた。

2月 2nd, 2019 at 5:00 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


共に進む時間

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

「落ちてきた? のですか?」
驚いて大きな声を上げてしまった。

すっかり陽が暮れてしまったミトヤの大樹には、私と賢者さん以外の人影は無い。
遠くから響いてくる滝の水音だけが、ざわざわとかすかに聞こえている。

私は、現代のエルビン渓谷にある箱舟遺跡が、この1万3000年前からずっとあの場所にあったのだと思っていた。古代モラ族は箱舟でやってきてあの場所に降り立った、そして、それ以来ずっとあの場所に箱舟はあった。そう思っていた。
だけど、どうもそうではないらしい。箱舟は、今から少し前に、あの場所に墜落したのだそうだ。

「そのことについて書いてある書物が、ラスレオ大聖堂の図書室にあったのですか?」

「書物があったわけではないわ。あそこにあるのは、ビスクがエルガディンから奪った古文書がほとんど。古代のことについて書いてある物はいろいろあるけど、近代について書いてあるものはあまりない。箱舟の話は、図書室で会ったその頃のことを知っている人から聞いたの」
記録として残っているものは、どうやら無いらしい。
知っている人から聞くしか、知る方法がないことのようだ。

「それにしても・・・。落ちてきたなんて・・・」
じゃあ、あの箱舟は、ずっとどこかを飛んでいたということなのだろうか。
少なくとも、古代モラ族が“謎の災厄”によって全ての技術を失ってから現代までの間ずっと。

箱舟がどこを飛んでいたのか、なぜ飛んでいたのかはわからない。“飛んでいた”のかどうかもはっきりわからないのだけど、最近まであの場所に箱舟遺跡が無かったのだとすると、1つ不思議なことがある。

現代の箱舟遺跡に居るモラ族、ウティルのことだ。
私のブランクノアピースに古代の記憶を吹き込んでくれた人である。
彼は、一人で箱舟遺跡の管理をしているらしいのだけど、ごく最近あの場所に突然現れた箱舟の管理が、彼にはなぜできるのだろう。
最近まで無かったのなら、今のモラ族にとってあの箱舟は見たこともない物のはずだ。
災厄によって全ての技術が失われてから少なくとも数千年の月日が流れている。初めて目にする箱舟の扱い方を、なぜあのウティルは知っているのだろう。

「それからね。驚かないで聞いてね」
と前置きしてから、賢者さんは話を続ける。

「あの箱舟があの場所に落ちてきたのは、今から10年前のことらしいの」
そう言って、賢者さんは私の顔をのぞきこんだ。
私の反応を確かめようとしているみたいだったけど、私はただ、なんのことかわからなくてキョトンとしている。

「そして、10年後の戦乱の世界“war age”には、その当時もう行くことができた」

「え?」

war ageのことは、もちろん私も知っている。
現代のヌブールの村で、長老イーノスから頼まれて戦争を終わらせるために旅立つ世界のことだ。
ビスクとエルガディンが戦争を始めてしまい、ダイアロスは戦乱の世になっている。
時代としては、今から10年後の世界。

「え? だって、じゃあ・・・」

「そういうことになるわ。10年前に箱舟が落ちて来たときから10年後の今は、ビスクとエルガディンが戦争を始めた時代。つまりwer ageよ」
そんな馬鹿な。だって、ビスクとエルガディンの戦争は、まだ始まっていない。
それに、“今”から10年後の世界がwar ageだ。10年前から10年経った世界ではない。

長老イーノスからもらった“時の記憶”を使ってヌブールの村にあるアルターから時間移動すると辿り着くwar ageは、“今”から10年後の世界。あくまでも、出発する時点から10年経った世界だ。
箱舟が墜落した時代のヌブール村アルターから移動して到着するwar ageは、今の私が居るこの現代ではない。
なんだか少し混乱してしまう。

あ。もしかしたら・・・。
war ageの開始時点が現代の時間の流れと共に動いているんじゃないのかな。
“今”から10年後というのがいつまで経っても変わらないのなら、“今”と“今から10年後”が一緒に動いているんじゃない?

川を流れる何本かの丸太の上を、ピョンピョン飛び越えているような感じ。
どれも一緒に流れているので、それぞれの間隔や位置関係は変わらない。
だけど、どの丸太の上にも時間は流れていて、周りの景色は変わっている。

ダイアロスという川の流れの中を、現代とそれぞれの時代が同じ間隔を保ちながら流れている。
私たち旅人は、丸太に飛び移るように時代を飛び越えることができる。

モラは、時間を超えることができないらしい。
少なくとも箱舟遺跡に居るウティルは、ancient ageに移動することができないと言っていた。
時の番人である彼らは、時の番をしなくてはならない。
彼らが移動できないのは、流れに乗ってしまっては、時を見張ることができなくなってしまうからなのだろうか。
あるいは、もしかして彼らは、流れの外に居るのだろうか。

 

ここミトヤの大樹にも、もちろん時間は流れている。
新しく家が建ち、壊れてなくなる家があり、去っていく人も居れば新しく来る人も居る。
現代から来ることができるancient ageはいつもただ1つだけ。“今”から1万3000年前の世界だけだ。
たぶん、このancient ageの時間も、現代の時間と共に流れている。
私たちが行くことのできる様々な時代は、同じ間隔を保ったまま時間の中を流れている。
それがいったいどういうことなのか、私にはまだよく理解できていないのだけど。

この世界に、現在から1万3000年前の世界に、箱舟はあるんだろうか。
この時代の箱舟という意味なのだけど、それはどこかにあるんだろうか。

箱舟には、古代の記憶が残っていた。
突然エルビン渓谷に墜落した箱舟。箱舟遺跡に宿っていた古代の記憶。
このancient ageから現代に、箱舟は移動したのではないのかな。私たちがアルターで時を超えるように、箱舟は時を超えて古代から現代に落ちてきたのではないのかな。
そこに何かの意味があるのだとしたら、それは、古代の記憶を現代に届けること。
古代の記憶を現代に届けるために、箱舟はエルビン渓谷に落ちてきた。

私は、空を見上げてみた。
もしかしたら、そこに飛んでいる箱舟が見えるかなと思ったのだけど、そこには何も飛んでいなかった。

1月 23rd, 2019 at 7:41 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


「ダイアロス豚問題」の解決に向けて

[WitchBlade]

ダイアロスの生き物に関する問題の一つに「ダイアロス豚問題」がある。
この問題は世間一般に広く知られているため、今さら私が解説する必要もないのだが、一応念のため簡単に説明しておく。

簡単に言えば、「ダイアロス豚問題」とは「ダイアロスに豚は生息しているのかいないのか?」という問題である。
実際現在のところ、私たち「旅人」が行動できる範囲には「豚」と思われる生物は見つかっていない。

しかし、ダイアロスの人たちは明らかに「豚」のことを知っている。
それは以下の事実から判断できる。
1.ビスク西のガード「アラン」が、ダーイン山オークのことを「豚みたいな奴等」と言っている。
「豚」を知らなければオークのことを「豚みたい」と表現することはないはずである。

オークと豚について発言するガード

 

2.「豚」の代用品として「オーク」を使用した料理に、「豚」の名前をつけたものがある。
「オークの肉」を使った「豚汁」、「オークの骨」を使った「トンコツ ラーメン」がそれである。

以上のことからダイアロスの人たちが「豚」のことを知っているのはまず間違いない。
しかし、現実問題として現在のダイアロスでは「豚」の姿を見ることはできない。
これをどう説明するのか?
大きく分けて二つの説が考えられる。

1.ダイアロスに「豚」は生息していないが、キ・カ大陸には生息している。
そのためキ・カ大陸からやってきたビスクの人たちは「豚」を見たことがある。
元からダイアロスにすんでいるエルガディンやモラの人たちは「豚」を見たことはないだろう。
2.ダイアロスに「豚」は生息しているが、私たち「旅人」はまだその生息域に行くことができていない。
ビスクの人たちに限らず、エルガディンやモラの人たちも「豚」を見たことがあっていい。

以上が「ダイアロス豚問題」の概要である。

さて-
賢明な読者の方々は既にお気づきだと思うが、最近この「ダイアロス豚問題」に新たな進展があった。
ダイアロスにおいて「豚」の個体が発見されたのだ。
この個体は既に死亡しており、残念ながら生態について詳しいことは分からなかった。
しかしキ・カ大陸から「豚」を輸入することは現在困難な状況であるから、これらの豚がダイアロスで生息していたことはまず間違いないと思われる。

発見された豚の個体

長い間ダイアロスを二分してきた「豚論争」が、ついに決着するときが近づいているのかもしれない。
続報が待たれる。

収穫を祝う原住民たち

1月 13th, 2019 at 4:36 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


ヒシさんへ

ヒシさんへ

倉庫のほうにファイルを上げました。
クエストを受けるところから、シップ装備をもらうまでです。
かなり大きいファイルがたくさんありますので、ヒシさんが落とし次第消すつもりです。
落としたら教えてくださいね。
よろしくお願いします。

WitchKraft

1月 6th, 2019 at 12:19 PM | Comments & Trackbacks (2) | Permalink


もっと大きな樹

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

北にある大きな滝から流れ落ちた水は、円形の土地をぐるりと取り囲むように水辺を作っている。
中央には、こずえの先も見えないほど高くそびえる巨大な樹。エルアン宮殿の中庭にあった木を大樹などと呼んで良いのかなと思ってしまうほど大きな樹だ。

Large Tree of Mytoja ここはミトヤの大樹と呼ばれている。

大樹の幹からほど近いところに、私や賢者さんの居候している家がある。
家の隣りには、家主さんの経営するオープンカフェ。私は、どこへも出かける用事がないときは、たいていこのオープンカフェの椅子に座ってぼんやり滝を眺めている。

今日、私は、いつものカフェの椅子に座って、ここはいったいどこなんだろうと考えていた。もちろん、ここがどこなのかは知っている。ミトヤの大樹にある、私が居候している家の隣りのオープンカフェだ。どこなのだろうというのは、そういう意味ではなくて、この場所というのは、いったいどういう場所なのだろうという意味。ここっていったい何なのだろうという意味だ。

 

ここは、現代から1万3000年前の世界なのだそうだ。
現代のエルビン渓谷にある箱舟遺跡。あの遺跡の中にはウティルという名のモラ族が居て、一人で箱舟遺跡の管理をしている。

ようこそ時の旅人・・・ 我らモラ族は時の番人。
まずは話を聞いてくれまいか?

箱舟を訪れた私が声をかけると、ウティルはそう挨拶してから話し始めた。

この遺跡に残るアルターは現代と古代・・・ 時を紡ぐ特別なアルター。
遺跡に宿る記憶を秘めたノア・ピースを装備することで、時代を超えることができる・・・

エンシェント・エイジ(Ancient Age)には我々は移動することができない。
古代の繁栄時代に何があるのか・・・ それは、貴方の目で確かめてくれ。

我らの先祖がどのように繁栄し・・・ そして、どのようにして滅んだのか・・・

時の証人となるかと問われてYesと答えた私は、ノア・ピースに新しい記憶を吹き込んでもらい、アルターに乗って時を超え、現代から1万3000年過去のこの世界にやってきた。
家主さんと出会ったのが一年くらい前。その後、彼女の家に居候させてもらうようになり、今ではほとんどの時間をこのミトヤで過ごしている。

ここには、私のように、現代から時を超えてやって来た人たちがたくさん居て、家を建てたり店を開いたりして暮らしている。
だけど、ここに居るはずの古代モラ族の姿はどこにも見あたらない。
居るのは、古代モラ族が作ったと思われるロボットたちだけ。
色々な物を売ってくれるオートベンダーは、私たちの使う金(Gold)を集めているのはモラが魔力研究に使うからだと言っている。とすれば、金を使って魔力研究をしている古代モラ族がどこかに居るはずなのだけれど。

キーワードは繁栄。そして生存・・・

箱舟に居たウティルが言っていた言葉だ。繁栄はわかるけど、生存というのはどういう意味だろう。2つ目のキーワード、生存というのが、私にはまだよく理解できていない。
彼は、私に、この古代で何を見てこいと言いたかったのかな。

 

夕闇が迫るころ、賢者さんが帰って来た。
まだオープンカフェの椅子に腰かけて考え事をしていた私に気づくと、やってきて隣に座る。

「ラスレオ大聖堂の図書室で、調べものをしてきたの」
と、椅子に座りながら賢者さんが言う。

「エルアン人について、何かわかるかなと思ったのでね」
帽子を脱いでテーブルの上に置く。
どうやら、調べてきたことを話してくれるみたいだ。

12月 21st, 2018 at 10:18 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


大樹

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

その大きな樹が生えているのは、石の壁で囲まれた四角い箱の中のような場所だった。
床も石、天井も石。高い梢に隠れてよく見えないけれど天井の中央部からは光が差し込んでいる。

ここに来るまでの道にも、たくさんの敵が居た。
エントランスに居たものの他に、ダイアロス各地に居るウィスプの仲間のようなチェイサーという空飛ぶ光。そして、置物かと思ったらいきなり動いて襲いかかってきたガーゴイル。どれも、宮殿に入り込もうとする者を排除するためにそこに居るように思えた。

賢王と呼ばれるエルアン人の王様が、はるか昔に時間の流れから切り離したこのエルアン宮殿の中に居る魔物たちは、現代のレクスールに居る動物たちよりも手ごわい敵ばかりだった。
賢者さんが応援を呼んだのも無理はない。私と賢者さんだけではここまでたどり着くこともできなかっただろう。

この中庭と呼ばれる場所からさらに奥、宮殿の内部にも行ってきた。
敵を倒しながら進んで、奥にあった転送装置からここへ戻ってきたところだ。
ここに戻る転送装置があった部屋には、他の場所に飛ぶ転送装置もあるらしいのだけど、私たちだけで行っても勝てないからということで、そちらに行くのはやめにした。

応援に来てくれていた三人は、賢者さんの召喚したアルターに乗って街へと帰って行った。
今、この中庭には私と賢者さんの二人しか居ない。静かに天井から差す光と湧き出して水辺を作る澄んだ水。風も入り込まないので、中央にそびえる大樹は動かない。石でできた大きな箱のようなこの空間は、時間が止まっているような静かさだった。

「あのリザードマンというのが、ここに攻め込んできた亜人なのですね」
私の声だけが、しずかな中庭に響く。
宮殿内部のいたるところに居たトカゲのような姿をした亜人たち。あれがエルアン人の宮殿に攻め込んできた亜人のようだ。中に居る亜人ごと宮殿を時間から切り離さなければならなかったほど手ごわい敵。あのリザードマンたちは、いったいどこから来たのだろう。

「現代のダイアロスでは、ハティル砂漠に居るわね」と賢者さん。
ハティル砂漠というのは、エルビン山脈の東にある砂漠のことだ。
砂嵐の吹き荒れる方位磁石も使えない場所。巨大な虫たちが砂の中に潜む恐ろしい場所。
行ったことはあるけど、あまり奥地までは入り込まなかった。あの砂漠の奥にリザードマンは居るらしい。

「過去に、砂漠からここまで、遠征してきたことがあるということですか」

「そのようね。現代では、リザードマンはハティル砂漠にしか居ない。レクスールにも、ハティルとレクスールの間にも居ないから、ここまで攻めてきた者たちが全て宮殿に入り込んだ時を見計らって宮殿ごと時間から切り離したのでしょう。みごとな手腕だわ。遠征に加わらなかった者たちが今もハティル砂漠に残っているということみたい」
なるほど。砂漠から出てきた亜人たちを、ここで一網打尽にしたということらしい。

「今、この宮殿を支配しているのは、ザハークというエルアン人なの。賢王も宮殿で暮らしていた住人達も今はもう居ない。居るのは、火竜神殿からここにやってきたザハークというエルアン人の魂だけ」
私たちだけでは勝てないからと行かなかった宮殿の最奥。そこに居るのがそのザハークのようだ。

この宮殿内に残っていたリザードマンたちも含めて、エルアンナイトやガーゴイルやチェイサーといったガーディアンを配置しているのは、そのザハークだということみたい。

賢王がここを封印したときからこういう状態ではなかったのだろう。攻め込んで来たリザードマンと今ここの主として君臨しているザハークというエルアン人が、ここをこんなおそろし気な場所にしている。かつてのこの宮殿は、どこもこの中庭のようにおだやかな場所だったのかもしれない。

攻め込んできて、そのまま封印されていたリザードマン。ガーディアンとしてザハークが配置したエルアンナイトやガーゴイルやチェイサー。そして、冷気をまとった巨大な狼と緑色の巨人。
私には、エルアン人と呼ばれる人たちのことがよくわからなくなっていた。
どうやら新しい生命を作り出すことすらできたらしい、謎に包まれた人々。彼らは、ここで、いったいどんな暮らしをしていたのだろう。

おだやかなこの中庭のような場所があるいっぽうで、おそろし気な研究を続けていた者も居る。
そういえば、リザードマンが住んでいるハティル砂漠には、生命の檻と呼ばれている研究施設のようなものもあるらしい。あれもまた、エルアン人たちの施設なのだろうか。

「あなたはバエルとホムンクルスはどちらも古代モラ族の作ったものだと思っているようだけど、私は、バエルとギガースは、エルアン人の作ったものではないかと思っているの」
賢者さんが唐突にそう言う。そして続けて言う。

「それから、アマゾネスも。フロストウルフも。エルアンナイトやガーゴイルも。古代モラ族の作ったホムンクルスが起源だというエルアン人たちが作った生命が、それらのものではないのかな。エルアンナイトやガーゴイルを生命とは呼べないかもしれないけどね」

作られた生命であるエルアン人たちが作った生命たち。どこからどこまでがと線を引くことはむずかしいけれど、アマゾネスのあの変貌をまのあたりにすると、あれが自然にできた生命だとは思えない。作られた生命だとすると、作ったのはモラではなくてエルアン人。生息場所から考えると、そうなのかな。

中庭の中央にそびえる大樹を眺めながら、私はエルアン人たちの姿を思い浮かべてみた。
この中庭には、たくさんのエルアン人たちがいたのだろうか。大樹の下でのんびりくつろいだりお喋りしたり、お昼寝をしたりしていたのだろうか。
彼らは、どんな人たちだったのだろう。

11月 20th, 2018 at 5:21 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


掬い上げるのは光か闇か

[セレナイアの手記]

ここ数日、アルケィナの資料室に籠ってノアストーンの力について調べていた。
ノアストーンをはじめ、古代モラ族が使っていたのは「原初の力」と呼ばれるものらしい。

私たちが普段魔法として使っているマナの力は、原初の力をすごく薄めて使うようなもので
謎の災厄でモラの力が失われたときに、エルアンの人たちによって編み出されたみたい。

破壊魔法なんかを見ていると、魔法の力でも十分恐ろしいように思うのだけど
原初の力を直接使ったら、いったいどんなことになってしまうんだろう。

それと、エルアンの遺跡、宮殿が発見されたときの記録を読んでいて
とても気になる一文を見つけた。
エルアン文明で研究されていた力を開放しようとした、ザハークという人物の発言だ。
「この死を告げる混沌の生物が、世界の光を、生を奪い、我らが望む繁栄の力を集めるのだ。」

前半はまあ、いいでしょう。古代モラ族と同じように、命を作り出すことができた彼らは
恐ろしい怪物も生み出してしまった。

それより私が引っかかるのは後半の
「世界の光を、生を奪い、我らが望む繁栄の力を集めるのだ。」ってところ。

光を、生を奪いっていうことは、要するに私たちを滅ぼそうっていうことだと思うのだけど
それがどうして「繁栄の力を集める」ことにつながるんだろう?

私たちが邪魔なだけなら、「我らが支配する世界」とかそういう表現になるはずじゃないかな。

この文がヒントになって、糸がつながった気がする。

古代モラ族の業績をもう一度思い返してみると
荒れ地だった世界を開拓し、今のほとんどの生き物を創造した。

どうやって?そう、「原初の力」で。

つまり、私たち今いる生き物は
ほんの少しかもしれないけど、原初の力を宿しているんじゃないかな。
ザハークは、その力を集めようとしていたんじゃないかな。

もしそうだとしたら、とても恐ろしいことだけど
似たようなことを、もっと執拗に、もっと周到にやろうとしている人がいる。

イーゴ。

彼は、これまでに度々私たちを、いえ、私たちだけじゃなくて
あらゆる生き物を魔物で襲い、数えきれないほどの命を奪ってきた。

殺す、という直接的な手段じゃなくても
たとえばソウルバインダーに差し出すスキルもそうだとしたら?
比較的平和な今の時代ですら
彼は着々と私たちの命から原初の力を集めているのかもしれない。

そう考えると、アルター、そしてマブのシンボルの関係にも、一つの仮説が立てられる。

・アルターは、ノアストーンの原初の力を世界中に配っている
・マブのシンボルは、世界中に広がった原初の力をイーゴの元に集めている

アルターの、上から下に広がるような形に対して
マブのシンボルは、下から上に広がるような形をしている。
どうでしょう、対をなしてるように見えてこない?

 

11月 14th, 2018 at 11:47 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


イーゴの状態遷移

[エルアン文明研究会]

文責:セレナリア

イーゴが各時代でどのように活動しているのか図に整理してみたいと思います。
議論のたたき台として、私が思う流れを書いてみました。

皆さまのご意見を募集しています。

11月 10th, 2018 at 11:12 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


怪物

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

数が多い。スルト鉱山のエルアンナイトと同じ物なのだそうだが、視界に入るだけで十体は居る。
片端から倒して進んでも良いのだけれど、私たちは、知覚範囲を狭める魔法をかけてエルアンナイトたちの横をすり抜けて行った。
狭い通路ではあるけれど、そうして抜けて行くのにじゅうぶんな幅はある。

「ここには、バエルは居ないのよ。でも、あれは居る」
そう言いながら賢者さんが指さす通路の先には、緑色の肌をした隻眼の巨人が立っていた。
ギガースだ。ギガースの中でも、かなり身体の大きな種類だ。

「レクスールの川沿いに居るやつがここまで入り込んできたんでしょうか」
私が訊ねると、賢者さんは首を横に振る。

「あの体格で洞窟の中を通り抜けてくるのは大変でしょう。無理にここまで来る必要などないでしょうし、最初からここに居たのではないかしら。つまり、エルアン人の王様がここを封印したときには、あの巨人はここに居たということになるわね」
言いながら、賢者さんは巨人にも魔法をかける。
私たち五人は、巨人に気付かれないように、そっと後ろを通り抜けた。

 

エルアンナイトたちが、エントランスに侵入した者を排除するための衛兵だとしたら、あの緑の巨人もそうなのだろうか。エルアンナイトと一緒に、ここを守っているのかな。

もちろんそれは、エルアン人たちがこの宮殿に住んでいた頃の話。つまり、排除すべき外敵というのは、その当時ダイアロスに住んでいた動物たちということだ。あるいは対亜人、もしくは対魔物。自分たちの宮殿に侵入してくる者を寄せ付けないためのガーディアン。

エルアンナイトと一緒に居るギガースもそのガーディアンの一員なのだとしたら、ギガースもエルアン人に使役される存在だったということになる。
宮殿を守っていた巨人が、宮殿が封印されて無くなったあと、野生化してレクスールとイルヴァーナとネオク高原に生息しているのかもしれない。

それとも、この宮殿が封印される時に、たまたま宮殿内部に入り込んでいたギガースが、そのまま生き残っているだけなのだろうか。
同居人や客人だとは思えないから、たまたま入り込んでいたのだとしたら攻めてきた側なのかもしれない。宮殿に攻め込んできたという亜人と一緒に、あのギガースも入り込んだのかも。

だけど、周りのエルアンナイトたちはギガースを攻撃するそぶりは見せない。彼らが衛兵なのだとしたら、敵とみなされていないあの巨人は、ガーディアンの一員なのだということになる。
火竜神殿にはエルアンナイト、このエルアン宮殿にはエルアンナイトとギガースが衛兵として配置されている。のかな。

「あのギガースが外から入って来たとは思えない。でも、あとからここに入り込んだ者も居るわよ。この先、この回廊の最奥にそれは居る」
そう言う賢者さんに続いて角を曲がると、エルアンナイトたちの向こうに違う姿の者が居た。
鎧を着た太った女性のようだ。

「あれは、バルカー。アマゾネスが年を取ると呪いによってあの姿になると言われている」
ナイトさんがぼそりと言う。

「もっとも、確認した者は居ない。ただそう言われているだけ。そして、バルカーがさらに年を取ると、ああなると言われている」
ナイトさんが指し示す回廊の最奥には、巨大な怪物が居た。
顔はバルカーと似ている。ただ、身体が蝶の幼虫のようだ。

「アマゾネスが年を取るとバルカーになり、さらに年を取るとあのエルーカスになる。呪いによってと言われているけど、そういう設計なのではないかと私は思う。つまり、そういうふうに作られているということ」
ナイトさんは淡々と言葉を継ぐ。

「作られて、って、アマゾネスも作られた生命だということですか?」
私が言うと、あのエルーカスが自然にできた生物に見えるのかとナイトさんは笑った。

「あそこにいるエルーカスたちは、宮殿の封印が解けたあとで入り込んできた。ここの封印が解ける前は、ヴァルグリンドに居たよ。宮殿の外にね。ただ、入り込んできたのは間違いないけど、元々はここの住人だったんじゃないかと私は思う。アマゾネスの生息地はレクスールだけ。それも、ヴァルグリンドの巣穴周辺から黄昏の砦にかけて。つまり、エルアン人の宮殿があった場所の近くだね。宮殿の外を守っていた守備隊が、宮殿が封印されたときに取り残されて外に残った。そういうことなのじゃないかなという気がする」
気がするだけだよ。と付け加えて、ナイトさんは口を閉ざした。必要なこと以外は話さない人のようだ。

「さて。戻りましょうか。あの怪物を狩るのが目的ではないから」
と、賢者さん。ここには見物に来ただけのようだ。

入口まで戻って、すぐ近くの部屋にある転送装置から宮殿の内部に入るらしい。
賢者さんが三人の助っ人を呼んだのは、その先に進むためだった。

11月 6th, 2018 at 3:41 PM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink


ヴァルグリンド

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

レクスールは高低差が大きくて谷にも隔てられているので、いつ来ても迷子になってしまう。
ぼんやり景色を眺めている間に、賢者さんたちの姿は地形に隠れて見えなくなってしまった。

イプスのような見渡す限りの野原なら見失うこともないのだけど、ここは遠くまで見通せない山と谷だらけの土地だ。目印になるようなものがなくてどこも同じに見えてしまうので、自分が今どのあたりに居るのかもわかりにくい。目的地のだいたいの場所は聞いていたけれど、それがどちらの方角なのかわからなくなった。

困ったなーと思いながら立ち尽くしていると、私の居ないことに気づいた賢者さんが戻ってきてくれた。このレクスールではぐれたときは、その場所にじっとしていた方が良い。へたに歩き回るとお互いの位置がわからなくなって、いつまでもグルグルと探し続けることになってしまう。
賢者さんに連れられて小山の向こう側へ行くと、そこに他の三人が私を待ってくれていた。

自分の背丈よりも大きな弓を持ったエルモニーと、盾を携えたコグニートの魔法使い。もう1人は真っ赤なナイトの鎧を着込んで金色の靴を履いたニューターだ。三人とも私とは面識がない。
三人が待っていた場所から一段低くなったところには、木枠で補強された洞窟が口を開けていた。

「あれがヴァルグリンド。主神オーディンの宮殿ヴァルハラへの入口」
ナイトの鎧を着たニューターがぼそりと言う。
仮面を着けているので彼女の表情はわからない。

「もっとも、ここにはオーディンもヴァルキリーも居なくて、アマゾネスが居るだけ。オーディンの名前の由来は“狂った者の主”らしいから、それに近い者なら宮殿の中に居るけどね」
ナイトさんは続けてそう言うと、行こうかと皆をうながした。

 

アマゾネスの徘徊する巣穴の中を通り抜けると、いちばん奥に石造りの建物があった。
扉を開けて中に入ると、そこはかなりの広さがあるひとつの部屋になっている。高い天井、部屋を囲む石の壁。奥の方に八角形の台座があるだけで、ドアはどこにも見当たらない。
行き止まりなのかと思っていたら、その八角形の台座から宮殿の内部に入れるのだという。円柱形の光が立ち昇ってはいないけれど、スルトの火竜神殿にあったのと同じ仕組みの転送装置らしい。

台座の中央に描かれた模様の上に乗り宮殿の内部に転送されると、そこにはブドウの粒のような形の青くて丸い玉が浮かんでいた。大きさは、私の腕でちょうど一抱えくらい。少し扁平になった上部には、太陽のような模様と文字のようなものが刻まれている。帰りはこの青い玉から外部に転送されるのだそうだ。

「ここは、過去にエルアン人が作った宮殿。亜人による襲撃を受けたときに、エルアンの王様が時間を凍結させて封印したらしい」
きょろきょろと周りを見回している私に、ナイトさんが言う。

「攻め込んできた亜人ごと、この宮殿を時間の流れから切り離したみたい。つまり、この場所に亜人を閉じ込めたわけね。そうまでして世界に広がらないようにしなければならないほど、その亜人というのはおそろしい者たちだったということ」
話すナイトさんの背後には、見覚えのある骸が転がっている。
打ち捨てられた人骨、そう見えるけれどあれはただの骸ではない。
しばらく眺めていると、案の定むくむくと起き上がって歩き出した。手には大きな剣を持っている。エルアンナイトだ。

「このエントランスにはエルアンナイトがたくさんうろついてる。スルトに居るのと同じ物だね」
と、背後を振り向きながらナイトさん。

「やっぱりエルアン人の作った護衛なのかな。侵入者を排除するために配置されたモンスターのように、私には思えるのだけれど」
私がそう言うと、ナイトさんは同意とも否定ともつかない唸り声を出した。

「ムトゥーム墓地やミーリム海岸に居るホネとは少し違うみたいだけどね。でもまあ、魔界出身なのは間違いなさそう。あの姿でこの世の生物ということはないだろうから」
魔界から召喚して飼いならしたのかな。それとも、呪術によって作り出された怪物なのか・・・。
ぶつぶつと口の中でそう続けるナイトさんの隣りで、私も彼女と一緒に首をかしげた。

賢者さんたち三人は、エルアンナイトに魔法をかけてどんどん奥へと進んでいる。
スルト鉱山で鍛冶屋さんが毒トカゲに使っていた、知覚範囲を狭めるあの魔法だ。
離れるのは危険だろう。私たちはお喋りをやめて三人のあとを追った。

10月 25th, 2018 at 11:58 AM | Comments & Trackbacks (0) | Permalink